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雀蜂の森

 大学生活初めての夏休み。
 八月もそろそろ終わりが近いが、大学生の夏休みはまだまだこれからだ。
 まだざっと一ヶ月ぐらいの休みがあるのだが、俺はいい加減退屈してきていた。
 友人たちとカラオケに行き、海に行き、キャンプに行き、祭りに行き、長期休暇を満喫していたが、夏のイベントと呼べるおおよそのものを消化してしまうと、すっかり暇になってしまった。
 ああ、暇だ。
 この暇をどうやってつぶそうか。
 考えた末、俺は虫取りに行くことにした。
 十八歳になった大学生がすることではないだろうが、別にすることもない。童心に返ったような気分になりたかっただけだ。幸いにもこの辺りは自然が豊かだ。虫を探すのに苦労はないだろう。
 俺はさっそくアパートを出て、自転車にまたがる。ここから十分ほどのところに山がある。そこならカブトムシぐらいはいるはずだ。
 俺は虫取り網もカゴも持っていない。必要ないからだ。別に虫を捕まえて育てようなんて考えていない。捕まえたらちょっと観察して、その場で逃がすつもりだった。
 脱水症状を警戒して、途中にある自販機でスポーツドリンクを購入した。
 準備は整った。俺は山に向かった。

山 スズメバチ

小説情報 短編 怖い:11 ID:188378京介

闇よりの手招き~ヤミヨミノシマネキ~

 今年もまた夏が来る。
 誰かが招かれナニカを無くす夏が。
 去年は腕。
 一昨年は脚。
 ならば今年は頭か胴体か。
 何故ならソレは、
 大人達には『見えない』
 幼子達にも『視えない』
 ソレは、僕達子供だけが知り得る『観える』怪異。
 薄昏い闇から手招きし喰らう禍々しきモノ。
 今年は誰が捕まるのか?
 暗闇に潜むソレが望むのは一体何なのだろう?
 僕らには分からない。
 ただ僕らに出来るのは相談し、逃げる事のみ。
 災厄のごときソレを防ぐ術は無いが故に。

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小説情報 短編 怖い:37 ID:319475秋月静流

蝉の啼く庭

 蝉が鳴いている。
 小さな家の小さな庭の小さな縁側から見える大きな樹に、ずっととまって泣いている一匹の蝉がいる。
 汗が滲む。
 縁側に吹きつける風は湿気混じりで、心だけに響く風鈴などはこの暑さには然したる影響も与えていないように思える。
 例年と然程も変わらず、ただ暑いままだ。
 俺はそれでいい。それこそがいいと感じている。
 しかしながら、ずっと隣にいる彼女はどう思っているのだろう。
 ずっと鳴いている蝉はなにを感じているのだろう。
 もう三日目になるだろう。
 ずっと同じ蝉が鳴いている。

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小説情報 短編 怖い:0 ID:223713MTボッククリ

キメラ

木田教授がいつものように脱線し、フランケンシュタインの怪物について講義をした日、長瀬は医科大の学食で、木塚に声をかけられた。
誰のものでもない独特のオーラを身にまとう木塚の話題は、フランケンシュタインの怪物について。
長瀬はその後何度となく、木塚から声をかけられることとなり、話題はいつもフランケンシュタインの怪物についてであった。
長瀬の近所で飼い犬が何匹も行方不明になっていた頃、長谷川奈津子が長瀬に歩み寄る。お互いの境遇故に惹かれ合う二人。
長瀬と奈津子の仲が親密になりつつある時、猫屋敷と呼ばれる家から数十匹の猫が消えた。
そして川口と町田という二人の男も、住宅街の闇の中にその姿を消した。
夏休み、寂れた大学で長瀬は木塚から「フランケンシュタインの怪物の研究成果を見て欲しい」と告げられる。
そして山奥に佇む古い洋館の地下で長瀬が目にしたものは、想像を絶するものであった。

残酷な描写あり 悲恋 学園 オカルト ダーク 現代(モダン) 大学生 モンスター 猫 恋愛

小説情報 短編 怖い:45 ID:47509ツヨシ

いつもと違う

昨日眠る前まではいつも通りだった。
目覚めるといつもと何かが違う。
何故部屋の中が真っ暗なんだ?
二日酔いで頭がガンガンする。
昨日は飲みすぎたようだ。
昨日の夜から少しずつ記憶を呼び戻すとしよう。
まずは友人の健二と居酒屋で飲んだ。
健二の嫁自慢を聞いた後、悪口ばっかりになったのも覚えている。
二件目のスナックに行って、水割りを7杯飲んだところから記憶が無い。
何か妙だ。
部屋の中を手探りで移動してみるも、やはり何かおかしい。
何があった?

小説情報 短編 怖い:7 ID:355362ぎーくおぶじえんど

墓あばきの少女

  『墓あばきの少女』


親が死に家を失い、妹とともに墓あばきをして放浪する少年がいた。

妹に首輪をして、自分の奴隷と誇示しなければ彼女を守れない。
死者の想い出を踏みにじらなければ、生きることができない。
そんな惨めな世界で、少年たちが辿りついたのは寂れた街だった。

その街は墓をあばいてもなにも言われない。
生きるために街に留まり墓をあばき続ける少年と妹。

そうしているうちに、妹に異変が起こる。
肌は青白くなり、憔悴していく妹。
薬は高価で、なかなか買うことができない……。

それでも必死に墓をあばき続ける少年。
妹のために、死者を冒涜する日々を送り――


そんなある日。

「おえっ」

なにも食べることができなくなった妹の口から。

飛び出してきたのは、真っ白い腕だった――

墓あばき 死者の冒涜 兄妹 スコップ

小説情報 短編 怖い:43 ID:335838裏山おもて

雨道の死臭

 去年の夏のことです。何気ない理由から、俺が近所にある事故物件からホラー話のネタを得ようと、興味本位に出かけてしまったのが始まりでした。
 何で、事故物件が多いのか。
 その時、少しでも疑いを持っていればこんな経験せずに済んだはずなのです。
 俺は別に霊感が強い人間ではありません。でも、俺は見えてしまったがために、死にかけました。
 以前、俺が住んでいたマンションの通りには、死体が歩いていたのです。
 あの日も豪雨でした。大雨の日になると、あいつは決まってどこかの民家やアパートの前に現れた。その身を腐らせた、死臭漂う水に塗れた身体を隠すために――

幽霊 水死体 お化け 恐怖 体験談 怪談 呪い

小説情報 短編 怖い:9 ID:323785ふじしろ あさひ

白い風船

 ふぅわりと、白い風船が揺れている。
 寂しそうに、ぽつん、と揺れている。
 マンション建設が不況で中止になり、荒れ果てた空き地の中央で揺れている。
 空き地は”立入り禁止”の柵で囲まれている、しかし簡易な柵の為好奇心旺盛な子供達ならばくぐって入れるだろう。ただの、一定間隔に埋められた木の杭に黄色と黒色の注意を促す紐が結んで囲ってあるだけだ。そして、手書きで書かれた貧相なプラスチックのプレートに、赤の油性マジックで”立入禁止”とだけ記されている。
 白い風船は、その中で揺れていた。雑草が生い茂っているが、まるで風船の花が咲いているかの様にひょっこりと顔を覗かせている。
 

風船 失踪 子供

小説情報 短編 怖い:68 ID:157064把 多摩子

トロピカルストーム

この夏、俺は早い休暇をとった。
南西の楽園への旅。
出発前に天候が悪くなるようなことをニュースでやっていたが、そんなことは嘘のように晴れ渡っていた。南国は俺を歓迎してくれたようだ。
肌に湿気を感じたが、降り注ぐ太陽の光がたちどころに蒸発させた。
俺は身体にまとわりついていた仕事や会社という服を脱ぎ捨て、バカンスという新しいシャツに袖を通した。
「うまい!」
いつものビールより軽い飲み心地が心を浮き立たせる。煮込んだ肉のように身も心もほろほろとほぐれていった。
彼女が手を振っていた。
早くも酔い始めていた俺は、笑顔で手を振り返した。

南国 台風 海

小説情報 短編 怖い:3 ID:107101あると

夏のホラー2013『あいつのドッペルゲンガー』

俺(永田久司)と後輩の川崎夏樹はとある会社に勤めている。

俺は会社の休憩室で何時ものように夏樹をからかって遊んでいた後に、女子便所から出てきた夏樹の鬼の形相に驚くが、何故かその直後に会った夏樹は別人のように普通だった。

しかし、ここ数日、同じように何人もの人がまるで別人のような怖い夏樹を目撃する。

そんな事があったある日曜日、俺や夏樹を含めた何人かはプールやお化け屋敷のある遊園地に行くが、そのプールやお化け屋敷で起こった信じられない恐怖体験が俺と夏樹を襲う。

ついに俺は夏樹を守るため、もう1人の夏樹と対決する!

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小説情報 短編 怖い:0 ID:342301JFZ

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