参加作品一覧
参加作品数:127作品/参加者数:127人
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初めまして。私は三利清香と申します。
私の勤めております藤井家のご息女、葉子様は、大変仁徳あふれるお方でした。美しく、聡明で、その上優しいとあれば、使用人である私がどれほど懐いたのか、想像に難くないでしょう。ええ、本当に、本当に私は葉子様を尊敬しておりました。だから、彼女が黙っていてほしいと思うことは、私は死んでも決して口外しないつもりです。
これは、とある名家の、使用人の話。
≪女学院シリーズ第2作目≫
※1作目「天文部奇談」はすでに公開させていただいております。
ミステリー 使用人 尊敬 文学作品のネタバレ 旧家 富豪 ダーク
入居希望ですか。はい、どうぞ。ちょうど一部屋空いていますので。
ええ、部屋の間取りと設備はこちらに書いてある通りとなっています。ええ……ええ、そうです。
はい…………はい、こちらのアパートは敷金と礼金、それに初回の賃料と保険料を含めて、これぐらいの金額となります。
よろしいですか? そうですか。ええ、はい。
ああ、初めて一人暮らしを? それでうちのアパートを?
まあ、それはありがとうございます。不安もあると思いますけれど、でも一人暮らしをすればきっと素敵な経験が出来ると思いますよ。きっと。
そうでしょう。きっと気に入っていただけると思いますよ。
はい。ありがとうございます。
では、さっそくお手続きしましょう。
ダーク 現代(モダン) 大学生 一人暮らし 入居者 アパート 超常現象 視線を感じる
SFホラー短編集「ワールド・エンド・ガールフレンド」。
ぼんやりと眺める景色は、いつもと変わらない物だった。変わりばえの無い日常を送る高校生、ケンジ。ふと気付いた時、彼は見慣れた公園のブランコに座っていた。
見上げると空は暮れかけ、レモン・イエローに染まっている。珍しくも無い光景だ。それが彼にとって特別な色になるとは、ケンジは夢にも思わなかった。
とりとめの無い生活を過ごす高校生の物語「リトル・グッバイ」から始まるSFホラー短編集。ラインのように繋がっていく人の輪の中で、表裏一体の愛と恐怖を描く。
閉じ込められた光の環の中で、人は愛と幻想の狭間を彷徨う。「リトル・グッバイ」の他、表題作「ワールド・エンド・ガールフレンド」、「さよならのタイミング」も収録予定。
恋愛 オカルト 現代(モダン) 少年 少女 ジジイ SF 怖くない
「退屈だなぁ」
「そう?」
「外は雨だし。テレビもつまんねぇし。なぁーんか面白い話ねぇの?」
「どんな?」
「どんなって別に……あ、悪ィ。ちょっと携帯……うん。あぁ。今? いや、仕事。マジで。1人だって。うん……わかってるよ。今度な、今度………」
「………」
「なんだよ。友達だって。そんな眼で見んなよ」
「………」
「なんだよ……」
「………」
「なんだよ!」
「ねぇ」
「ん」
「……面白いかどうかは、わかんないけど」
ひとつ、怖い話をしてあげる。
残酷な描写あり サスペンス 怪談 女こわい ドロドロ 後宮 浮気者の末路
「女性のみ入居可」
このマンションの中で、ただ一室にだけそういう条件がついている。
その意味も理由も考えることなく、僕は男でありながら、やむを得ずその部屋で一カ月暮らすことになった。もちろん格安で。
夜になって床に入る頃、それは現れた。
部屋の中をごろごろと転がる、黒いもの。
壁にぶつかり家具にぶつかり、時折「ぐひゅ」と変な音を発しながら、やがてそれは僕の枕もとに辿り着く。
耳元で声がする。
「あなた……ちがう。あなた……だ、れ。お、おと……こ、いや」
僕は寝たふりを続ける。
「お……き、て。ねえ」
これは夢だと思いこむことにする。
声は続く。
「ね、ねこ……つれて、きて。せなか、かゆいから……ねこ、と……おか、し、もって……き、て」
――この部屋には誰かが、いや何かがいる。
そう思いながら、僕は気を失った。おかげで朝まで熟睡できたらしい。
寝不足とは無縁だった、僕の不思議な夏の物語。
※初のホラーです。あんまり怖くないかも? の予定です。
格安物件 マンション たぶん怖くない
俺は欲求不満だった。
仕事でも、生活でも、独りぼっちだった。いつか、刃物でも持って大暴れしてやるんだと夢――見てた。「初めまして。私の名はドンキー。『ドリームランド』から来ました、よろしくね」……そこには、現実世界に居る俺たちが設計や設定されたものがたくさん居るらしい。彼らは『呼ばれる』まで、出番を待っているのだという。
「あいつらは他人だ。全くの他人。それなのに、何で……」
感情を抑えた声を出すと、彼女は言った。
「殺したいんだ……でしょ?」
――これは、夢じゃなかった。
『彼女の名は、ドンキー』
ある男の悲しい記述。
小説家になろう『夏のホラー2013』企画、参加作品。
久しぶりの執筆です。宜しくお願いします。
凶器 人形 薬 副作用 依存 リスカ スマホ ブログ 精神疾患 鬱病 自殺 身勝手 秋葉原事件 付属池田小事件
あなたは夏期休暇を利用して、久々に帰省することにした。
さびれた地元駅前の風景は見たところ、昔とほとんど変わっていないようだが、さほど懐かしさは覚えない。むしろその進歩のなさに、呆れに近い感覚さえ抱いてしまう。
昼間だというのに人通りもまばらな田舎の商店街を、ぶらりと歩く。するとあなたは、ふいに見覚えのある顔とすれ違う。
「あれ、お前もこっちに来ていたのか。奇遇だな」
小中学が同じで、その頃よく一緒に遊んだ友人。まともに会うのはもう十年ぶりだ。
あなたは彼と共に、近くの喫茶店に入ると、再会を喜びあった。話題はやがて互いの近況や生活状況、仕事内容等へと、とりとめなく移ろっていき、最終的には思い出話となった。
さて、しばしの歓談の後、一度手洗いに立ったあなたが席に戻ると、どことなく改まった様子で友人が言った。
「なあ、昔話ついでに、ひとつ聞いてもらいたい話があるんだが……」
突如語られ始めた、奇妙な話。
―――『あれは、俺たちが小学校6年生のときだったかな。クラスメイトに、クロカワっていう女の子がいただろ?』―――。
はじめは何の気なしに聞いていたあなたは、次第にその話の内容に胸騒ぎを覚える。
クトゥルフ
三十二年前、ある高校で大事故が起こった。給食室で出火、大爆発の末に校舎が炎上し、生徒や教師が多数、焼死した。
校舎から運び出された焼けただれた遺体に、人々は目を覆い、号泣し、若すぎる高校生たちの死を悼んで年忌がくるごとに彼らを偲んだ。けれども、今は死んだ生徒たちを直接、知る者は学園にはいない。法要はイベント化し、跡地に建て替えられた新校舎は、”成仏できない生徒の霊が出る”などという怪談まがいの噂が立ち、夏休みのかっこうの肝試しの場所となってしまっている。
今年の夏の三十三回忌をもって、火災事故の被害者の法要は最後の年忌とし、それ以降は法要は行われない。それを「弔い上げ」あるいは、「問切り」と呼ぶのだ。
そんなことには、興味のない生徒たちによって、今夜も学校の校舎で、肝試しが行われる。
―― 今年の校舎はかなりヤバい。「弔い上げ」を告げられて、忘れ去られる運命の寂しげな亡霊たちが、こぞって友を間引きに来てるから ――
高校生の榊隼人には、校舎に巣食う身の毛もよだつような霊が視えた。だが、肝試しメンバーの中の一人の少女に心奪われた彼は、知らず知らずのうちに彼らの後を着いていってしまうのだった。
残酷な描写あり 高校生 32回忌
僕は、大学の講義の合間に派遣のアルバイトをしていた。
これはそのときに体験した説明のつかない不気味な出来事についての話だ。
当時も今も、僕はあの出来事について理解することができないし、あの時に感じた寒気に震えることがある。
それほどまでに僕にとって忘れることのできない体験だったのだ。
直射日光に照らされ焼けた鋼鉄で囲まれたコンテナの中。
人どころか虫ですら五分と長居できないような灼熱の空間で、あの光景は誰が作り出したのだろうか。
そして、あの影。
夏の暑い日の異常はいつまでも僕を蝕んでいる…
恐怖体験 コンテナ
神秘的な雰囲気を持つ美人の女主人を目当てに「壺中天」というバーの常連客になった私は、彼女から店名と同じ名の「壺中天」というカクテルを奨められる。
「壺中天」という言葉は中国の故事で、その昔、費長房という男が仙人の持つ壺の中に入り、その中に広がる別天地の楽園で遊んだという話に由来する。
彼女はその壺の中のような「別天地」をこのカクテルで味わえると私に話す。しかし、それは他言無用であるという。
私は怪しみながらもそのカクテルを飲んだ。
世にも奇妙な物語 現代 バー 女性バーテンダー ミステリアス