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約束

 雑木林をひたすら、走る。

 古木の枝の狭間から見えるのは、雲ひとつない、蒼天。
 それが、何故か切なさを誘っている気がするのは……自意識過剰なのだろう。と、おれは思った。
 いや、センチメンタリストだったのは、「わたし」の方か。
 「わたし」なのか、「おれ」なのか。
 もう、どうだって良い。
 あの「場所」から逃げる事が出来れば、それで良い。

 立ち止まるな。走れ。

 捕まるな!!

 そんなおれの脳裏に響く、言葉。

(だから、言ったでしょう?)


「プロローグ」より、一部抜粋。

残酷な描写あり 性同一性障害

小説情報 連載(全4部) 怖い:1 ID:32451桂まゆ

自白第一の時代

 被疑者の人権など無く、拷問で自白を引き出し、そして残虐な処刑方法が公然と行われていた江戸時代。自白がすべてだったゆえに、時として無実の人間が処刑されることも珍しくなかった。
 海沿いの刑場で下男として過ごす健蔵は、初めのうちは罪人の叫びが耳に残り、後ろ髪に引かれるような思いで働いていた。だがようやくそれに慣れはじめたある日、親殺しの罪で磔となった町娘・みのの処刑を執り行う。懸命に無実を訴え、槍を突き刺す直前、自分をにらみつけた目が忘れられなかった。そしてその夜、処刑場を片付けていると、みのが語りかけてくる。
「あたしは誰も殺してなんかいない」
 だが、役人でもないただの下男である健蔵はみのに言った。
「俺に言ったってどうしょいうもない。おめえがやったっていっちまったらそれまでだろ?」
 冷たく言い返した健蔵に、みのはこうつぶやいた。
「あたしにはわかる。これから七日の間に、あんたに焼きつく女が必ず出てくるってね」

 そして健蔵は出会う。みのと同じように、無実の罪で殺された女たちに・・・・。

R15 残酷な描写あり

小説情報 短編 怖い:1 ID:39291中村鉄也

カワヲトル

「カワヲトル……」

来婆市には特に目立った産業も観光名所もなく
もし市外から人が来るとすれば鬼振川目当ての
釣り客がほとんどである


目立たない土地であった来婆市は2012年3月の

”一家惨殺事件”

により脚光を浴びる


そして同年9月来婆市に一家惨殺事件の
唯一の生き残りであり、重要参考人でもある
一家の長女が同市の山中に潜伏しているとの噂が


その報を受け、長女の叔父にあたる警部が動く


一家の長女は何故再び故郷に帰ってきたのか
複数の人間の証言・視点を時系列でまとめ
その真相を解明していきたい


「カワヲトル……」

殺人 川 伏線

小説情報 連載(全10部) 怖い:0 ID:181020田中 富

苦労のない穴にさようなら

夜。電気を消してひとつひとつ想像してみてほしい。
半開きのドアの向こう。揺れ動くカーテン。笑顔のピエロ。物音がする押入れ。誰もいない二階。片目がない剥製の眼窩。電源を切ったテレビ。薄暗くなっていく閉店間際のデパート。奥の見えない林。何かをクチャクチャ食べる音。窓の影。自販機の下。天井の端。
何かがいるような……。
それは明るい場所には現れない。恐怖は暗闇に形を得るのだ。
私達は殺した友達を捨てるため、立入禁止の地下工場跡地へと下りていく。暗闇が支配する地下深くへと――。

R15 残酷な描写あり 女子会 グロ クトゥルフ神話 サスペンス

小説情報 短編 怖い:89 ID:50675誇大紫

暗闇からのラブコール

「あ、栄子ちゃん?おれおれ◎◎。ひっさしぶりぃ♪」
───翌日、とある女性が自宅で死体として発見された


それは一本の電話から始まった不可解な猟奇殺人
その男の電話を受けた女性から尽く死んでいく
犯人は誰なのか
何の目的で殺すのか
どうやって侵入したのか
────何もわからない。


わかることは、共通するその死様だけ
止まらない止めらないサスペンスホラー


その電話に出てはいけない死神からのラブコール
次に死ぬのはあなただから


「そこにいるのはだれ?」

R15 残酷な描写あり サスペンス 猟奇殺人 最後は…

小説情報 連載(全4部) 怖い:5 ID:212454仮死状態

 康哉(こうや)は親父と勝負をしていた。
 1年以内に漫画雑誌で受賞を取れば康哉の勝ち。晴れて漫画家への道を歩むことができる。
 できなければ負け。実家の工場を継ぐことになる。
 父親は小さな町工場の社長をしており、将来は息子に後を継がせるつもりでいた。
 しかし、康哉には漫画家になるという夢があった。
 口論になるのは必然的。言い争った結果、両者から出された答えがこの勝負だった。

 その期限も――あと1ヶ月。

 康哉はこの頃からある夢を見るようになった。
 突然、目の前に光が広がり、次いでクラクションがうるさく鳴る。
 決まって起きるのはクラクションの鳴った直後。
 今日も原稿は白い。

 ――今回こそ受賞できるはずだ。
 

R15

小説情報 連載(全2部) 怖い:1 ID:115387回遊魚

魑魅

 
 近づくと、黒猫は威嚇の声をあげて僕をにらみつけた。
 病的に濁った瞳。骨張った身体。逆立つ黒毛には艶がなく、ところどころ禿げあがっている。
 さらに一歩近づく。猫は身体を震わせるだけで、逃げようとしない。
 ノラ猫。
 僕は飼い猫でないことに安堵し、それから、安堵した自分に舌打ちする。
 ノラ猫でも飼い猫でも、失われるものに変わりはない。
 同じ命だ。
 また一歩、近づく。
 黒猫は一段と鋭い唸り声をあげる。
 でも、それだけ。逃げることはない。
 逃げたくても逃げられないのだ。
 極度の栄養失調と、病に冒された身体。
 けれど、何よりも大きな枷《かせ》となっているのは――
 僕は嫌悪と怒りを込めて、それを見る。
 痩せこけた黒猫の背中から飛び出ている、ブヨブヨとした白い突起。
 突起は親指ぐらいの太さで、先端は丸みを帯び、黒い横筋が幾つも―― ちょうどミミズの腹のように―― 刻まれている。
 それは蠢く度に猫の背に埋まっていき、既にほとんどの部分を溶け込ませていた。
 ああ、駄目だ。
 僕はやるせないため息をつき、距離のなくなった猫の前にかがみこむ。
 
 こうなったら、もう助けられない。




                 よろしければ、お読みください。

短編

小説情報 短編 怖い:2 ID:83885つちふる

偏食悲劇

神さまってのは、理不尽だよな?

まあそう思わないっていうなら、それでもいい。

きっと君はあれだろ? 「あの時の○○があったから、今の自分がある」とか、堂々と言えちゃうタイプの人間だろ?
本来は成立しないはずの項目を無理やり因果で縛りつけて、歪な公式を作っちゃう人間なんだろ? だって公式なんだから、それに当てはまらない事例はすべて誤りだってな感じの。

うん。でもまあ、それでもいいんだ。きっとそれは正しいんだから。

希薄な過去とリンクさせ、今を生きるための糧とする。
その理不尽なやり方は、こと生きるという側面に対しては実に理にかなったやり口だ。
それをおれは肯定し、同時に激しく希求する。だって現在進行形でいじめられているおれには、その方法論は適用できないからね。

さっさといじめを過去に、さらには思い出として語れる立派な大人になりたいのだが、なかなかそうはさせてくれない。未だおれにとって、神さまは理不尽なままだった。

そしてそんなある日、おれは一人の女の子と出会うはめになった。
クソそのものの環境で成された、クソのような出会い。吐き気と自嘲のボーイミーツガール。
神さまおれ達に幸あれ。もしくはてめーもここに来い。

小説情報 短編 怖い:13 ID:356545おおたに

哀眼(あいがん)

人の家を覗くことが趣味な主人公。幼い頃から人のことを観察するのが大好きで、他人のことばかり見ていた。大人になってもそれはやめることが出来ない。今日もいつものように人の家を覗き、自分の家に帰ったのだが、次の日に目が覚めたら目がひとつ増えていた。お腹に出来たその目はただ、まばたきをするだけで害はないようだった。しかし、気が付いたら目はだんだんと増えてきて……。目が増えてくる恐怖、消えることのない目、そんな異常な状態に主人公はおかしくなっていく。

R15 残酷な描写あり

小説情報 短編 怖い:15 ID:335655KI

ラッキーアイテム

私はある日、通勤途中に電車とホームの隙間に落ちかけた。その時は親切な人に助けられ事なきを得たのだけれど、私はそのときあるものを目撃していた。それは、特に注意して見なければ「たまに見るよね」程度に流しちゃうようなものだったのだけれど、私は気になってしまった。それ以来、毎日それが気になって見るようになり……私はある秘密に気づいてしまう。その秘密を、もしも知らないままでいたら、私は命を失っていたかもしれないほどの。それでもなお、私はその秘密を知りたくはなかった……。

怪談 悲恋 呪い 世にも奇妙な物語

小説情報 短編 怖い:47 ID:188588だんぞう

 
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